オランダに移住する際や事業を行う際、税金制度を理解することは非常に重要です。
この記事では、オランダの個人所得税の仕組みや計算方法、課税率、税控除について最新情報に基づき詳しく解説します。。目次:
オランダ所得税申告は誰が対象?移住者全員必須?
オランダへ移住した方の中で、オランダ国内またはオランダ国外に一定以上の所得または課税資産がある方は「税金申告は義務」です。
所得税申告は、オランダ語でaangifte inkomstenbelastingと言います。
配偶者/公式パートナービザでオランダに移住されている方も、その配偶者/パートナーに税金申告義務があれば、ご自身も自ずとタックスパートナーになり、申告の義務が生じます。
雇用されて従業員として働いている場合は、所得税と社会保険料は、毎月の給与から自動的に計算され天引きされます。しかし雇用で働いている方でも、副収入や資産があったり、過払いした税金の戻りを申請するなどで、所得税申告が必要な場合があります。
フリーランサーや個人事業主を含む「事業主」の場合は、自動では課税されませんので、所得や資産などはご自身の責任で申告する義務があります。
いずれの場合でも、オランダ税務署で申告が必要だと認識された方には、毎年2月頃に申告依頼通知が届きます。
税務署から申告の依頼が届かなくても、上記の通り、一定額以上の収入または課税対象の資産がオランダ国内外にある場合は、申告する必要があります。
オランダでは1月1日から12月31日までの所得を翌年申告します。
申告期間は毎年3月から開始です。
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Mフォームでの申告(移住した年の申告)
オランダに移住した後のはじめての申告は、Mフォーム(M-form)と呼ばれる特殊な申告となります。
また、オランダを退去した年度も、Mフォームでの申告をします。
オランダに移住したり退去した年の分の所得を申告するのがMフォーム申告です。
Mフォームでの申告の場合であっても、申告する内容は、以下で解説する通常の申告とほぼ同様ですが、対象はオランダに在留していた期間のものとなります。
この場合に支払う税金は、通年オランダに居住していた場合とは計算方法が異なります。
期限は遅れないように申告しましょう。
オランダの税金は高い?
実は、オランダには様々な税金控除、免税減税措置がありますので、一概に「オランダは税金が高い国だ。」とは言えません。
個人事業主の場合には事業主控除もあり、また事業を始めてから3回の申告ではスタートアップとしての税金優遇もあります。
なお、資産税に関しては、近年免税枠が増えました。
納税者が申請できる給付金システム、子ども手当や健康保険料給付(オランダ語:Toeslagen)は、永住権を持たない日本人の移住者にも申請権利があります。
日本で課税された所得は、オランダと日本との租税条約により、二重課税を回避できます。
以下に詳しく記しますが、きちんと申告して税金控除適用の機会を逃すことのないようにしましょう。
記事情報提供:オランダコンサルタント政府公認税務オフィスオランダでの税務申告を日本語でサポート致します。お問い合わせはこちらまで。
オランダの所得税、その課税システム
オランダには、ボックス1、2、3システムとして知られる3種類の課税カテゴリがあります。
ボックスごとに課税率が異なります。
- ボックス1:雇用、ビジネス、自宅、その他、所得にかかる税金です。
一般的に、一番税金額を左右するカテゴリーです。(詳細はこちら。) - ボックス2:所有する株やシェア(最小5%)からの配当や利益にかかる税金です。
2024年度の申告では、課税所得が€67,000未満の場合、24.5%の税率が適用されます。
€67,000以上の部分には33%の税率が課されます。
2025年度については、課税所得が€67,804未満の場合は引き続き24.5%の税率が適用されますが、€67,804以上の部分には31%の税率が適用され、税率が低くなることになります。 - ボックス3:資産にかかる税金です。
資産とは、申告の対象年の1月1日に所有していた、銀行預金、投資、5%未満の会社株式、現金、暗号通貨、非居住用不動産、保険料預金、養老保険などを指します。
国内外を問わず世界中に存在しているものが対象です。Box 3税は純資産に課されますが、非課税限度額を超える部分にのみ適用されます。
2024年度の非課税限度額は、単身者の場合€57,000、夫婦またはタックスパートナーの場合€114,000です。
2025年度では、単身者の場合の非課税限度額は€57,684、夫婦またはタックスパートナーの場合は€115,368になります。以下の例を見てみましょう。
単身者Aさんは、オランダ国内外のどこかで合計€150,000の資産を持っています。
また、オランダ国内外のどこかで合計€50,000の負債があります。
結果、純資産額は€100,000(総資産から総負債を引いた額)となります。
この場合、2024年度の所得税申告では、€57,000が非課税となり、残りの€43,000が課税対象となります。2024年度および2025年度のBox 3税率は36%です。
ただし、この税率が課税対象資産に直接適用されるわけではありませんのでご安心を。
税務当局は課税対象資産に対して「架空」の利回りを算出し、その架空の利回りに対してBox 3税率を適用します。
したがって、上記の例では、€43,000に対して直接36%の税率が適用されるのではなく、税務局は、この€43,000の資産に対する、架空の利回りを算出し、その利回りに対して36%の税率が適用されます。この「架空」の利回りを計算する方法は非常に複雑であり、銀行資産とその他の資産や負債は異なるウェイトで評価されます。
2027年度には、一般の人々にとってよりわかりやすい新しいボックス3の税額計算方式が導入される予定です。
2023年度から2026年度までは "つなぎ "の期間として扱われ、2027年度の申告までに、より適切な制度になるよう、計算方法が継続的に調整されます。
各ボックスにかかる税金は、それぞれの免税枠や控除を適用させたのちに個別に計算します。
その後、3つのボックスすべての税金を合算します。
合算額から控除を適用させたものが最終的に支払う税金となります。
各ボックスともにオランダ国内のみだけではなく、日本を含むオランダ国外でのものも申告対象となります。
次に、ボックス1の収入への課税計算方法について説明します。
ほとんどの方はこのボックス1への課税が所得税額を大きく左右します。
多くの日本人にとってもこのカテゴリーでの課税額が最も重要なキーとなります。
ボックス1にはどんなものが入る?課税額の計算方法とは?
ボックス1は非常に大きなカテゴリです。
雇用、ビジネス、所有し居住している家の登記上の賃貸価値、年金、ロイヤリティ、私物の販売からの利益、外国所得、その他、収入とみなされる項目のあらゆるものが含まれます。
オランダで事業をされている方は事業の損益はここに入ります。
申告対象となる収入はオランダ国内外を問いません。
ボックス1の収入合計額は段階的に課税されます。
つまり、所得金額のレベルごとに異なる課税レートが適用されます。
各ティアへの課税は低いものから段階的に計算し、残りの所得金額が次の段階に当てはまれば再度計算していきます。
各段階の数字を合算したものがボックス1への課税額となります。
2024年度、2025年度の税率は以下。
2024年度ボックス1にかかる課税率(所得税と社会保険料)
2024年度の所得は2025年に申告します。
2024年度の収入は2つのレベルで課税されます。
以下の数字は第1レベル部分のみ課税となる社会保険料の部分も合算されています。
- 第1レベル:€0から€75,518未満
所得税: 36.97% - 第2レベル:€75,518以上
所得税: 49.50%
注:
年金受給開始年齢(66歳と10ヶ月)までの方の税率です。
€額は収入そのものではなく、控除等を引いた額です。
2025年度ボックス1にかかる課税率(所得税と社会保険料)
2025年度の所得は2026年に申告します。
2025年度の収入は3つのレベルで課税されます。
以下の数字は第1レベル部分のみ課税となる社会保険料の部分も合算されています。
- 第1レベル:€0から€38,441未満
所得税: 35.82% - 第2レベル:€38,441から€76,817未満
所得税: 37.48% - 第2レベル:€76,817以上
所得税: 49.50%
注:
年金受給開始年齢(67歳)までの方の税率です。
€額は収入そのものではなく、控除等を引いた額です。
ZVW (Zorgverzekeringswet):所得による健康保険料
所得税と社会保険料と別に、人々はZVW(Zorgverzekeringswet)と呼ばれる健康保険料を政府に支払う必要があります。
これは、毎月民間企業に支払う健康保険料とは異なります。
被雇用者の場合、雇用主が給与からZVW(健康保険料)を控除します。
2024年度の控除率は総給与の5.32%であり、2025年度では5.26%となります。
一方、被雇用者でない方の場合、ZVWは課税所得(課税控除後の所得)に対して課されます。
この税率は2024年度では5.32%、2025年度では5.26%です。
つまり、これらの金額を超えた分にはZVWは課税されません。
オランダのタックスクレジットとタックスディダクション(減税や免税の税控除)
幸い、オランダには多くの減税や免税等の税控除があり、最終的に支払わなければならない税額を減らすことが可能です。
ボックス1、2、3で合算された税額からも最終的にさらに控除があります。
以下に概要といくつかの例を示します。
タックスクレジットとは、つまり、実際支払う税金額を減らす措置です。
さまざまな種類がありますが、最も重要な2つの措置は、誰もが取得できる一般的な税額控除「algemene heffingskorting」と、雇用や自営に関わらずすべての労働者が取得できる「Arbeidskorting」です。 控除上限額は、収入額と年金受給年齢に達しているかどうかに依存します。
一方、タックスディダクションでは、課税対象となる所得の額が減らされる措置です。
たとえば、個人事業主を含む起業家の場合、[ondernemersaftrek]、[startersaftrek]、[meewerkaftrek]などの控除システムがあり、課税対象の利益を減らすことができます。
さらに、慰謝料、住宅所有費用、教育費、健康関連費用などの特定の個人費用も、適合となれば、課税所得額を減らすタックスディダクションとして使用できます。
したがって、税金を最小限に抑えるためには、可能な限りすべての免税や減税措置を利用して、適切に所得税申告をすることが非常に重要です。
間違いがあれば、免税や減税の機会を失うだけでなく、必要以上に多くの税金を支払う可能性が高くなります。
故意でなくても適正な申告がなされなかった場合、税務署からの指摘が入った後に、修正申告する手間やコストは非常に大きなものとなります。
期限はいつ?どのように申告をする?
オランダの会計年度は1月1日から始まり、12月31日で締ります。
通常の所得税の申告期間は翌年の3月1日から4月30日までです。
これは、3か月ごとまたは1か月ごとに申告する、事業のVATの申告とは異なります。
申告期限前に申請する場合に限り、所得税申告の期限延長も可能です。
申告が完了したら、税務署からの納税通知書を待ちます。
オランダ税務署からのレター「voorlopige aanslag」や「definitive aanslag」って何?何をすればいい?
「voorlopige aanslag」とは、オランダ税務署があなたの所得や資産を事前に評価するものです。
「voorlopige aanslag」には、a)所得税の申告後に送られてくるものと、b)税務署があなたの所得をあらかじめ推定して作成するものがあります。
a)は、税務署が所得税の査定を確定させるのに時間がかかる場合、所得税の申告後に送られてきます。
所得や資産によっては、「voorlopige aanslag」を受け取った場合、確定前の所得税や社会保険料を支払ったり、受け取ったりします。
b)の「voorlopige aanslag」は、税務署のほうで、所得税や社会保険料の支払い義務があると推定される方に対して送付するものです。
これは、人々が、税金分のお金を使い込んでしまい、後で税金を払えなくなるのを防ぐために、税務署が行っている請求方法です。
こちらの「voorlopige aanslag」は、通常対象年の1月頃に送られます。
所得税と社会保険料の見積もりは、前年申告した所得と資産に基づいて行われます。
一度にまとめて支払うか、11回に分けて毎月支払うかを、選択することができます。
「definitive aanslag」は最終的な税額の決定通知です。
上記の事前評価「voorlopige aanslag」が届かないで、直接最終通知が届くこともしばしばあります。
今記事の提供元:オランダコンサルタント(政府公認税務オフィス)では、日本人の方の申告を日本語でサポートしています。個別の税務相談や、節税、ビザ維持のための事業の数字やローン申請についてアドバイスをいたします。お気軽にお問い合わせを。