オランダ移住をされた方の多くから、「オランダの所得税申告システムとは?」「オランダの所得税は高い?」「税率はどのくらい?」「Mフォームって何?」等、質問が寄せられます。
オランダに移住する方にとって、オランダの税金のシステムを知ることは非常に大事です。
この記事では個人の所得税の仕組みや計算方法、課税率、税控除について解説します。
目次:
オランダ所得税申告は誰が対象?移住者全員必須?
オランダへ移住後、オランダ国内またはオランダ国外に一定以上の所得または課税資産がある場合は「税金申告は義務」です。
所得税申告は、オランダ語で
aangifte inkomstenbelastingと言います。
配偶者/公式パートナーとしてオランダに移住されている方も、その配偶者/パートナーに税金申告義務があれば、ご自身も自ずとタックスパートナーになり、申告の義務が生じます。
雇用されて従業員として働いている場合は、所得税と社会保険料は、毎月の給与から自動的に計算され天引きされます。しかし雇用者であっても、副収入や資産を報告したり、過払いした税金の戻りを申請するために、所得税申告が必要な場合があります。
フリーランサーや個人事業主を含む「事業主」の場合は、自動では課税されませんので、所得や資産などはご自身の責任で申告する義務があります。
いずれの場合でも、オランダ税務署で申告が必要だと思われる方には、毎年2月頃に申告依頼通知が届きます。
税務署から申告の依頼が届かなくても、上記の通り、一定額以上の収入または課税対象の資産がオランダ国内外にある場合は、申告する必要があります。
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Mフォームでの申告(移住した年の申告)
オランダに移住した後のはじめての申告は、Mフォーム(M-form)と呼ばれる特殊な申告となります。
また、オランダを退去した年度も、Mフォームでの申告をします。
オランダに1年を通してではなく、一部の期間に在留していた年度分で行うのがMフォーム申告です。
Mフォームでの申告の場合であっても、申告する内容は、以下で解説する通常の申告とほぼ同様ですが、対象はオランダに在留していた期間のものとなります。
この場合に支払う税金は、通年オランダに在留していた場合とは計算方法が異なります。
Mフォームでの申告期限は6月30日までです。
期限は遅れないように申告しましょう。
オランダの税金は高い?
実は、オランダには様々な税金控除、免税減税措置がありますので、一概に「オランダは税金が高い国だ。」とは言えません。
個人事業主の場合には控除も有り、また事業を始めてから3年間は税金の優遇もあります。
なお、資産税に関しては、近年免税枠が増えました。
永住権を持たない移住者であっても、納税者が申請できる給付金システム(子ども手当や健康保険料給付等)もあります。
オランダと日本との租税条約により、日本での課税所得は二重課税を回避できます。
以下に詳しく記しますが、きちんと申告して税金控除適用の機会を逃すことのないようにしましょう。
オランダの所得税、その課税システム
オランダには、ボックス1 2 3システムとしても知られる3種類の課税カテゴリがあります。
ボックスごとに課税率が異なります。
- ボックス1:雇用、ビジネス、自宅、その他、所得にかかる税金です。
(記事下部に詳細あり。) - ボックス2:所有する株やシェア(最小5%)からの配当や利益にかかる税金です。
課税率は2022年度分、2023年度分ともに26.90%です。 - ボックス3:資産にかかる税金です。
資産とは、申告の対象年の1月1日に所有していた、銀行預金、投資、5%未満の会社株式、現金、暗号通貨、非居住用不動産、保険料預金、養老保険などを指します。
国内外を問わず世界中に存在しているものが対象です。-ボックス3の2022年分申告のシンプルな税額シミュレーションは以下です。-
独身で、1月1日に全世界の総資産が€150,000(15万ユーロ:約2,160万円@2023年2月のレート)有り、負債がない場合、免除額を差し引くと課税ベースは€99,350となり、ボックス3の税額は€943となります。
夫婦で€300,000(30万ユーロ:約4,320万円@2023年2月のレート)を持っていた場合、資産を均等に分け、負債がない場合、課税標準から免除額を差し引くと€198,700ユーロとなり、ボックス3にかかる税額は€1,886となります。
各ボックスにかかる税金は、それぞれの免税枠や控除を適用させたのちに個別に計算します。
その後、3つのボックスすべての税金を合算すると、最終的な所得税額が算出できます。
上記で分かる通り、ボックス2への課税は固定税率であり、ボックス3には独自の複雑な計算方法があります。
各ボックスともにオランダ国内のみだけではなく、日本を含むオランダ国外でのものも申告対象となります。
次に、ボックス1の収入への課税計算方法について説明します。
ほとんどの方はこのボックス1への課税が所得税額を大きく左右します。
また、多くの日本人にとって最も重要なキーとなります。
ボックス1にはどんなものが入る?課税額の計算方法とは?
ボックス1は非常に大きなカテゴリです。
雇用、ビジネス、所有し居住している家の登記上の賃貸価値、年金、ロイヤリティ、私物の販売からの利益、外国所得、その他、収入とみなされる項目のあらゆるものが含まれます。
オランダで事業をされている方は事業の損益はここに入ります。
また、申告対象となる収入はオランダ国内外を問いません。
ボックス1の収入合計額は段階的に課税されます。
つまり、所得金額のレベルごとに異なる課税レートが適用されます。
各ティアへの課税は低いものから段階的に計算し、残りの所得金額が次の段階に当てはまれば再度計算していきます。
各段階の数字を合算したものがボックス1への課税額となります。
2022年度ボックス1にかかる課税率(所得税と社会保険料)
2022年度の所得は2023年に申告します。
2022年度の収入は2つのレベルで課税されます。
第1レベル部分のみの課税となる社会保険料の部分も合算されています。
- €0から€69,399未満
所得税: 37.07% - €69,399以上
所得税: 49.50%
注:
税率は年金受給開始年齢(66歳と7ヶ月)までの方が対象です。
€額は所得ではなく、控除等を引いた課税所得です。
2023年度ボックス1にかかる課税率(所得税と社会保険料)
2023年度の所得は2024年に申告します。
2023年度の収入は2つのレベルで課税されます。
第1レベル部分のみの課税となる社会保険料の部分も合算されています。
- €0から€73,031未満
所得税: 36.93% - €73,031以上
所得税: 49.50%
注:
年金受給開始年齢(66歳と10ヶ月)までの方の税率です。
€額は所得ではなく、控除等を引いた課税所得です。
オランダのタックスクレジットとタックスディダクション(減税や免税の税控除)
幸い、オランダには多くの減税や免税等の税控除があり、最終的に支払わなければならない税額を減らすことが可能です。
以下に概要といくつかの例を示します。
タックスクレジットとは、つまり、実際の税金額を減らす措置です。
さまざまな種類がありますが、最も重要な2つの措置は、誰もが取得できる一般的な税額控除「algemene heffingskorting」と、雇用や自営に関わらずすべての労働者が取得できる「Arbeidskorting」です。 控除上限額は、収入額と年金受給年齢に達しているかどうかに依存します。
一方、タックスディダクションでは、課税対象となる所得の額が減らされる措置です。
たとえば、個人事業主を含む起業家の場合、[ondernemersaftrek]、[startersaftrek]、[meewerkaftrek]などの控除システムがあり、課税対象所得額を減らすことができます。
さらに、慰謝料、住宅所有費用、教育費、健康関連費用などの特定の個人費用も、適合となれば、課税所得額を減らすタックスディダクションとして使用できます。
したがって、税金を最小限に抑えるためには、可能な限りすべての免税や減税措置を利用して、適切に所得税申告をすることが非常に重要です。
間違いがあれば、免税や減税の機会を失うだけでなく、必要以上に多くの税金を支払う可能性が高くなります。
また、故意でなくても適正な申告がなされなかった場合、税務署からの指摘が入って後から修正する手間やコストは非常に大きなものとなりえます。
期限はいつ?どのように申告をする?
オランダの会計年度は1月1日から始まり、12月31日で締ります。
通常の所得税の申告期間は翌年の3月1日から4月30日までです(移住した年のMフォーム申告は翌年6月30日まで)。
これは、3か月ごとまたは1か月ごとに申告する、事業のVATの申告とは異なります。
申告期限前に申請する場合に限り、所得税申告の期限延長も可能です。
申告が完了したら、税務署からの納税通知書を待ちます。
「voorlopige aanslag」って何?何をすればいい?
「voorlopige aanslag」とは、オランダ税務署があなたの所得や資産を事前に評価するものです。
「voorlopige aanslag」には、所得税の申告後に送られてくるものと、税務署があなたの所得をあらかじめ推定して作成するものがあります。
前者は、税務署が所得税の査定を確定させるのに時間がかかる場合、所得税の申告後に送られてきます。
所得や資産によっては、「voorlopige aanslag」を受け取った場合、確定前の所得税や社会保険料を支払ったり、受け取ったりします。
最終的な査定「definitive aanslag」が行われた後、さらに差額を支払ったり、戻りがあることがあります。
後者の「voorlopige aanslag」は、税務署のほうで、所得税や社会保険料の支払い義務があると推定される方に対して送付するものです。
これは、人々が、税金分のお金を使い込んでしまい、後で税金を払えなくなるのを防ぐために、税務署が行っている請求方法です。
こちらの「voorlopige aanslag」は、通常対象年の1月頃に送られます。
所得税と社会保険料の見積もりは、前年申告した所得と資産に基づいて行われます。
一度にまとめて支払うか、11回に分けて毎月支払うかを、選択することができます。
今記事の提供元:オランダコンサルタント(政府公認税務オフィス)では、日本人の方の申告を日本語でサポートしています。個別の税務相談や、節税、ビザ維持のための事業の数字やローン申請についてアドバイスをいたします。お気軽にお問い合わせを。