初出:2024年12月19日
最終更新:2025年12月20日
2024年に掲載した記事以降、オランダにおける偽装自営業(schijnzelfstandigheid)の取り締まりをめぐる運用方針について、新たな情報が明らかになっている。
現在、フリーランス(ZZP’er)とフリーランスと契約する側(企業)との契約形態をめぐり、政府と議会の間で調整が続いている。
現時点で確認されている主なポイントは以下のとおり。
- ソフトランディングは2026年初頭まで延長される見通し
当初は2025年末で終了するとされていた、罰金を伴わない「ソフトランディング(猶予的運用)」について、2026年に入ってからも一定期間(数か月程度)継続される方針が示されている。
この期間中は、原則として警告や是正指導が中心となり、通常の行政罰(罰金)は直ちには科されない運用が想定されている。 - ただし、完全な免責ではなく、是正・追徴は引き続き可能
ソフトランディング期間中であっても、偽装自営業と判断された場合には、過去分の給与税および社会保険料の修正や追徴(naheffing)が行われる可能性がある。
また、悪質または意図的と判断されるケースでは、例外的により重い措置が取られる余地も残されている。 - 2026年中に本格的な罰金適用へ移行する可能性は高い
今回の延長は限定的な措置と位置づけられており、2026年後半以降は、罰金を含む通常の取り締まり体制へ移行する可能性が高いと見られている。政府は、無期限の猶予を認めない立場を繰り返し示している。 - 議会と政府の調整は継続中
下院(Tweede Kamer)では、さらなる猶予や法整備を求める声が引き続き出ているものの、現時点で2026年全体を通じた猶予が正式に決定した事実はない。
今後の議会審議や政府判断によって、運用が再度見直される可能性は残されている。 - 新法(VBARなど)は依然として施行前
雇用関係の判断基準を明確化する新法案(VBAR等)は、引き続き立法過程にあり、2026年初頭時点でも施行には至っていない。
そのため、法改正を待たず、現行ルールのもとで段階的に取り締まりが進められる状況が続いている。 - 契約する側・フリーランス双方に慎重な動き
先行きが完全には見通せない状況の中、契約する企業側ではフリーランス契約の見直しや新規契約の抑制が進んでいる。
一方、フリーランス側でも、契約内容や働き方が偽装自営業と判断されないかへの警戒感が一段と高まっている。
本記事は2024年12月19日に公開した以下記事を、2025年末時点の情報を反映して更新したものである。
今後も政府および議会の動向によって状況が変化する可能性があり、本記事は必要に応じて更新される予定である。
以下は、2024年12月19日に公開した記事本文であり、制度の背景と基本的な考え方を整理したものである。
オランダ政府が2025年1月1日から偽装個人事業主に本腰を入れて取り締まる予定だ。この話をすでに耳にしている人も多いだろう。 しかし、具体的にどんな風に進めるつもりなのか? ここで詳しく説明する。
そもそも偽装個人事業主とは?
偽装個人事業主は、本来は正社員やバイトを雇うべき仕事に、個人事業主やフリーランスを使うことだ。
これで雇用主はオランダの労働法を気にせずに済むし、社会保険や税負担も節約できる。こうしたやり方が問題視されている。
「個人事業主」の真の定義とは?
オランダ税務当局は、個人事業主としての正当性をいくつかの基準で定義しており、以下のポイントが重要視されている。
*ここでのフリーランサーとは個人事業主を指している。
- フリーランサーが仕事の進め方や労働時間を自ら決定し、クライアントが指示しないこと。
- フリーランサーがクライアントの組織内で他に誰も持っていない特定のスキルや知識、経験を有し、社員が行う業務をフリーランサーが行わないこと。
- 契約が短期間である、または週に限られた時間(例えば月20時間未満)で行われること。契約が3カ月以上で月20時間を超える場合、偽装個人事業主の可能性がある。
- フリーランサーが単一のクライアントのみを持つ場合、または(クライアントが複数以上あったとしても)収入の大部分が単一のクライアントからのものである場合も、偽装個人事業主と見なされる可能性がある。
- フリーランサーが自身を起業家として積極的にマーケティングし、事業に対して財務リスクを負っていること。
- 報酬が同業界の従業員に通常支払われる額よりも明らかに高いこと。
偽装個人事業主の問題点
このようなやり方の問題点は、主に個人事業/フリーランスの労働者側に現れる。
低賃金、雇用の安定性や失業保険の欠如、障害保険がないこと、そして正社員やバイトの雇用では認められないような労働条件が典型例だ。
政府にとっても問題は大きい。社員よりもフリーランスを雇う方が企業にとって有利なため、不公平な競争が生まれる。また、フリーランスは従業員保険制度に貢献しないため、社会保障制度が弱体化する。
偽装個人事業主は多くの業界で見られるが、特に飲食業、食品配達、建設業、さらには医療分野でよく見られる。有名な例として、配達サービスDeliverooの配達員がフリーランスではなく従業員であるとオランダ最高裁が判断したケースがある。
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DBA法 (オランダ語: Wet Deregulering Beoordeling Arbeidsrelatie)
こうした問題を解決するため、オランダ政府は2025年1月1日からDBA法を本格的に執行する。この法律は実際には2016年から施行されていたが、ルールの不明確さを理由に執行が延期されていた。しかし今年、政府は2025年からの執行を決定した。
具体的な執行方法
DBA法の具体的な執行について、財務・税務担当のTjebbe van Oostenbruggen国務長官は議会への書簡で、2025年を「移行の年」とし「緩やかなスタート」を切る方針を示した。
2025年1月1日以降、企業はDBA法の規則を遵守するために必要な措置を講じることが求められる。違反が見つかった場合、税務当局は企業に警告を発し、規則や義務を詳しく説明する。また、個人事業主を正社員やバイトとして雇用する、またはフリーランス契約の条件を変更するなど、是正のための具体的なアドバイスが行われる。
さらに、税務当局による企業の会計監査が行われる可能性もある。
2025年には違反に対する罰金は科されないが、2026年からは罰金が適用される見込みだ。
企業はまた、2025年1月1日に遡って追加の賃金税や社会保険料を支払うよう求められる可能性がある。
2030年以降は、最大5年間遡ってこれらの負担が課される。
ただし、悪意のある意図がある場合や過去の指示や警告に従わなかった場合は、この「緩やかなスタート」の例外となり、厳しい対応が取られる。
個人事業主/フリーランサーにとってこれは何を意味するのか?
現時点では、政府は個人事業主/フリーランサーよりもフリーランスを雇う企業に焦点を当てているようだ。
ただし、企業が税務調査を受けた場合、その企業と関係のある個人事業主/フリーランサーも調査対象になる可能性がある。このような対応は税務当局の通常の手続きとして行われるものだ。
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