なぜオランダなのか?
オランダは、外国人(日本人も含む)が起業するのに理想的な国のひとつです。
なかでも、日本人にとっては、日蘭間でかわされた条約があるために、日本国籍を持つひとには、オランダで事業をしながら生活する権利が与えられています。
この条約では、日本人起業家は配偶者/パートナーと子どもも連れて移住することができます。そればかりではなく、2020年からの変更により配偶者/パートナーへ雇用の権利が付与されています。
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近年オランダ経済は良好で、安定した成長が続いています。
起業家にとってオランダは、「個人および事業の税制上のメリット」、「ビジネスプロセスの多方面でのデジタル化」、「インターネットバンキングおよび電子支払いシステムの普及」、「国際的なEコマースプラットフォームおよびツール」、「小さな事業でも十分にやっていける開かれた市場」等、列挙すればきりがないほど、理想的な事業環境が用意されていると言えます。
地政学的にも、オランダはヨーロッパへの玄関口とされ、近隣諸国へのアクセスは簡単でとても便利で、国自体にも非常に良好な物流や交通インフラが整っています。
オランダで事業を行うことの、もうひとつの大きなメリットは、オランダに限定されずEU全体をひとつの市場としてターゲットにできることです。
上記のように、起業や移住のメリットが大いにあるオランダですが、起業するために知るべき、事業形態の種類や税務については、多くの日本人にとって複雑でわかりにくいことも事実です。
実際に、移住や起業をされている(される予定含む)の方から質問が多い、「オランダで起業した場合の事業形態の種類や税務等の義務」について基本情報をお伝えいたします。
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オランダでの事業設立
オランダでビジネスを開始する最初の公式な手順は、商工会議所(オランダ語:Kamer van Koophandel/KvK)で事業登録をすることです。
事業の登録が完了していない限り、一切の事業活動(市場調査は除外)はすることができません。 尚、このプロセスを踏むと、自動的にオランダ税務当局にも事業の存在が登記されます。
ご自身の事業を登録する前に、どのような事業形態がご自身のやりたい事業内容や規模に最適かを判断する必要があります。
オランダでのさまざまな事業形態
オランダにはいくつもの種類の事業形態がありますが、移住する日本人にとって最も一般的なものは以下のものです。
- 個人事業/フリーランサー(オランダ語:Eenmanszaak)
オランダの「eenmanszaak」は、法人格を持たない個人事業の形態で、事業の所有者はあなただけです。
つまり、事業に関わるすべての責任(借金や契約上の責任など)を個人として負うことになります。
「eenmanszaak」は原則として1人1事業しか持てませんが、複数の屋号や異なる事業活動を同じ事業の下で行うことは可能です。
さらに、この個人事業主として従業員を雇うこともできます。その場合はオランダ語で Zelfstandig Met Personeel(ZMP) と呼ばれ、「従業員を持つ個人事業主」という意味になります。
逆に、従業員を雇わずに自分一人で事業を行う場合は Zelfstandige Zonder Personeel(ZZP) と呼ばれ、日常的には ZZP'er と呼ばれることが多いです。 - パートナー事業
パートナー事業にはいくつか種類がありますが、最も一般的なのはオランダ語で Vennootschap onder firma (VOF) と呼ばれる、共同事業形態です。
VOFは、2人以上が1つの事業名のもとで共同でビジネスを行う形態です。
各パートナーはオランダ語で Venoot(パートナー) と呼ばれ、事業に資金・物品・労働力などを提供します。
VOFも法人格は持たないため、各パートナーは個人事業主と同様に、VOFの債務について個人で責任を負います。
VOFを設立するには、パートナーシップ契約の合意書を作成して KvK に提出する必要があります。
また、事業主ビザを申請する場合は IND にも提出が必要です。
オランダコンサルタントでは、VOF契約合意書の作成をサポートしております。事業主ビザ申請者の場合には、各パートナーの持分がビザ要件を満たしているかどうかも併せて確認いたします。 - BV会社(法人)(オランダ語:Besloten Vennootschap/BV)
オランダのBVは、他国の「有限会社」に相当する法人格を持つ事業形態です。
eenmanszaakやVOFとは異なり、BV自体が債務に対して責任を負います。
ディレクターとして、あなたはBVの従業員として行動し、BVを代表して業務を行います。
BVは、あなた1人を取締役兼大株主(オランダ語:directeur-grootaandeelhouder/DGA)として設立することも、他の個人や法人と共同で設立することも可能です。
事業形態の比較
形態 | 法人格 | 責任 | 従業員 | 主な特徴 |
---|---|---|---|---|
Eenmanszaak | なし | 個人 | 可 | 個人責任、簡単に開始 |
VOF | なし | パートナー個人 | 可 | 複数人共同、契約書必要 |
BV | あり | 会社 | 可 | 法人格、DGA制、法人税対象 |
また、日本(または他国)に拠点を持つ会社のオランダ支店や子会社を設立することも可能です。
事業で発生する税務や税金
オランダでは事業を登録すると一定の税金申告義務が生じます。
この申告義務は実際の事業活動があるなしに関わらず発生しますので注意が必要です。
事業登録後に申告をせず、期限を過ぎますと、税務当局よりペナルティーが科される可能性があります。- セールスタックス/売上税
オランダ語では「belasting over de toegevoegde waarde」/BTWと呼ばれ、英語ではVATと呼ばれます。
これは、売上に対してかかる税金(21%、9%、または0%)です。
受け取りまたは支払ったすべてのVATは、区分け、記帳し、通常4半期に1回ごとに税務当局に申告する必要があります。 - 所得税
個人事業主やパートナー事業をされる方は、 個人の所得税申告でまとめて行います。(詳細についてはリンク記事をお読みください。)
BVおよびその他の法人事業については、法人所得税を申告する義務があります。
こちらは個人の所得税申告とは別途に行います。 - 給与税
雇用をしている場合には、従業員の給与税と社会保険料を給与から差し引いて明細を作成、管理と申告する義務があります。 - 市税
事業所、営業所や店舗を構えている場合は市税が請求されます。
その他の義務
事業形態と事業活動によっては、その他の義務が発生する場合があるので留意をされてください。
- ご自身の事業がBVのような法人形態の場合は、年次会計報告書を作成し、KvKに報告します。
- 同じくBV法人の場合には、ディレクターは通常年間最低€56,000(2025年度) の給与を受け取る必要があり、従業員と同様、給与税や給与管理の作業が必要です。
- 従業員を雇用しる場合には、税務機関に雇用主としての登録をして、所定の雇用リスクと評価(RI&E)を機関に提出し、加えて上記「給与税」の項目に記載した給与管理を行います。
- 食品や健康サービスなどを取り扱う一部の事業では、自治体またはその他の政府機関からの特定のライセンスまたは許可の付与が必要です。
事業活動の内容によっては、特定の専門的資格も必要になる場合があります。 - オランダには、市町村のゾーニング規制があり、事業を行う場所にはルールが設けられています。例外を除いて、許可なしには自宅を事業活動に使用することはできません。
- 事業内容が該当する場合には、環境規制の遵守をする必要があります。
- 事業活動が該当する場合には、輸出入のライセンスを保持する必要があります。
上記の列挙は、完全なリストではありません。実際には事業内容に該当する当局へ詳細を確認ください。